報道特集:JRの予定を変えた一瞬!

今日は昨日の研究会で貸してもらったプロジェクタをTさんに返す日である。
待ち合わせは、朝8:42分JR「土浦」駅改札口。
たまたまではあるが、私は今日運良く(?)いわき方面に出張で、常磐線を「特急スーパーひたち」で移動することになっていた。
通常は、自宅に近い新京成線「M」駅より「松戸」駅に移動し、「松戸」から8:20発の「スーパーひたち7号」に乗る。この「スーパーひたち7号」はたまたまTさんの家に近い「土浦」駅に停まるので、少しだけ早く家を出て、「松戸」駅7:56発の「勝田」行き普通電車で移動すると「土浦」着が8:42。後発の「スーパーひたち7号」が「土浦」で追いついて発車するのが8:51だから、「土浦」駅で9分の余裕がある。その時間で「土浦」駅の改札越しにTさんにプロジェクタを渡すという計画になっていた。Tさんは最初はプロジェクタ返却のために私がわざわざ早く家を出て何度も乗り継ぎすることをとても気に病んでくれていた。いつもと変わらず優しいTさんであった。でもこの計画を決行することにしたのだった。前日メールでTさんには「万が一不測の事態が発生した場合には連絡します」と書いていたが、「そんなことはまずない」という確信が自分のどこかにはあった。

でも、その「万が一」が現実のものになろうとは・・・

新京成電車が多少遅れることを懸念して、予定より早く家を出たところ、25分も前に「松戸」駅に到着。ここまでは順調。先発の7:53発の「取手」行きの電車も定刻に発車した。あと3分で「勝田」行きの電車が来る。
ここで駅の放送:「7:56発の勝田行きは、前の駅を発車したところで荷物がドアに挟まり緊急停車しました。安全確認を行っているのでしばらくお待ちください」
MSK:「えぇっ、遅れるの。でも9分の余裕があるからぎりぎりなんとか大丈夫だろう。」
またまた放送:「安全確認が終わりました。12分遅れて到着します。」
MSK:「えぇっ、12分遅れるの! でも特急のことは何も言ってなかったな。JRは特急優先だから「松戸」と「土浦」の間のどこかの駅で追い越すつもりかも・・・」
そのあたりを聞こうと思い駅員さんを探したが、あたりには見当たらなかった。
予定通り「勝田」行きに乗るか、それとも予定を変更して「松戸」から特急に乗ってしまおうか・・・ さんざん悩んだあげく、私は「勝田」行きに乗ることを選んだ。
その理由は、次の仮説による。
・12分遅れが「土浦」駅接続余裕の9分を食いつぶしたとしても、JRはぎりぎりなんとか「土浦」駅で接続することを選択するだろう。
・JRはこの程度の時間差で普通電車をどこかの駅に停めて特急を追い越させるような緊急措置を選択することはしないだろう。
・くだり方向は1路線なので、駅と駅の途中で普通電車が特急に追い越されることはないだろう。
・万が一「土浦」駅手前のどこかの駅で特急に追い越されたとしても、「水戸」から2時間後発の特急に乗れば今日の出張はなんとかなるだろう。電車が遅れたことを理由にすれば許容されるだろう。
このような憶測の中、「勝田」行きは12分遅れて「松戸」駅を発車した。特急との関連を示す放送はいまだにまだ一切なかった。

では、次に、「土浦」駅でTさんに無事にプロジェクタを返して、さらに限りなく短い接続時間で後続の特急に確実に乗るために、「対応すべきこと」を落ち着いて考えなければならない。
まずは、Tさんに電話だ。電車が遅れていることを教えることが先決だ。
万が一とは言っていたが、電話をかけた。「土浦」駅での接続時間が限りなく短くなる可能性が高いことを伝えたところ、Tさんが改札ではなくホームまで来てくれることになった。ホームへの入場券購入コストが発生することになりすまなく思った。前から5両目に乗っていることを伝えた。

しばらくすると、Tさんより電話があった。
「MSKさんまずいよ。土浦駅で特急が先に発車するという放送があった。」との連絡だった。
「先ほどの仮説は外れてしまったのか・・・」と愕然としつつ、2時間遅れの特急に乗れば今日はなんとかなるだろうと自分を冷静に導いた。一旦は、そうやって自分を落ち着かせたものの、いろいろ考えているとやはり「特急が先に土浦を発車するのは納得が行かない」という気持ちが強くなった。では、どうするか? 私は次の3つの方針を立てた。
・結果が出るまで絶対に諦めない。
・打てる手はダメモトでもすべて打つべし。
・それでダメなら潔く諦めて頭を下げて回ればよい。
まずは、「土浦」駅に電話して、自分は特急に乗る意思があることを伝えよう。その上で、ダメモトでもできれば「土浦」駅で特急に待たせて欲しいことを伝えよう。

では、どこに電話しよう? 携帯電話の電話帳に会社の最寄り駅である「S」駅の電話番号が入っていた。ダイヤルした。
MSK:「土浦駅の電話番号を教えてください。」
S駅:「管轄外なので、今すぐにはわからないが、集中対応センターの電話番号ならわかるからそこにかけてみたらどうか?」
MSK:「ではそれでいいので教えてください。今こういう状態で困っていますので・・・」
”050”で始まる番号だった。(050-2016-1600←悪魔の番号です!みなさん注意!)かけて見た。何度かけてもつながらない。集中センターとはえてしてこんなもんだとはわかってはいるが、サービス向上に逆行しているのではないかと思う。こんな集中センターだったら自分たちの手間減らしが最大の目的であり、顧客満足は二の次なのではないかと思ってしまった。

以前は最寄り駅に直接電話をかけてその地域の正確な情報を瞬時に手に入れることができた。例えば、新潟中越地震直後に新潟方面のお客様のところに出張しなければならなくなった時のことである。上越新幹線以外に長野新幹線を使って「長野」まで行き、そこから先の「直江津」ルートが成立するかどうか至急に検討が必要だった。信越本線が正常に機能しているか、また、信越本線を走る快速「妙高」が予定通り運行されているかを調べるのに、JR「長野」駅に電話したらすぐに正常運行であることを教えてくれたのだった。正直言ってとても助かった。

携帯電話の電話帳にはもうひとつ自宅に近いJR「T」駅の電話番号が入っていた。ここにかけてみた。自動音声で「次の番号におかけ直しください」と。その番号を聞いて唖然。先ほどの集中センターと同じ番号ではないか・・・ 次は104にかけて「土浦」駅の番号を調べようと試みた。「土浦」駅では番号登録がないが、集中センターの番号ならわかる、とのこと、その番号もなんと、先ほどの番号と同じ。「さっきからまったくつながらない」ことを伝えると、落し物関係の集中センターの番号が別にあるとのこと、その番号を聞いてかけてみた。これもまったくつながらない。やっぱり頼りになるのは「S」駅か、と思い、再度かけてみた。先ほどとは違う人の声だ。
S駅:「駅の番号はもう公開しないことになっています。教えられるのは集中センターのみです。」
という冷たい応対。JRのサービスはこんなもんか、と思いつつ、集中センターにかけ続けた。やっとつながっても、「混み合っているのでお待ちいただくかもう少し経ってからおかけ直しください」という冷たい音声電話。一刻を争う事態なのにさっぱりあてにならないではないか・・・

そうこうしているうちに電車は「土浦」駅に到着した。約15分の遅れである。途中の駅で特急に追い越されるために長い時間停車した様子はなかった。
Tさんがホームに立っていた。ドアが開いて飛び降り、「Tさ〜ん」と呼ぶ。
プロジェクタを渡してお礼を述べた。Tさんいわく「特急は後発になった。追い越しをやめたようだ。」と。すごくホッとした。最後まで諦めなかった気持ちが通じのだと思った。Tさんには月曜日の朝っぱらから、あわただしい思いをさせてしまってとてもすまなく思った。Tさんのプロジェクタなのにね・・・

実際、乗ってきた「勝田」行きの普通電車は先頭4両が「土浦」停まりであった。ということは「土浦」駅で列車の切り離し作業が行われ、切り離した車両がまず発車し、その後に「勝田」行きが発車し、その後に特急が到着したので、「土浦」駅では思ったより余裕があった。

特急電車がホームに到着した。特急に乗り込むとTさんがホームで手を振って見送ってくれた。こんな光景は何十年ぶりだろう・・・ すがすがしい気持ちになった。
特急電車はいろんな思いをいっぱい乗せてゆっくり動き出した。
Tさんがホームの端まで走ってくれることはなかった・・・(ちょっと残念←冗談)

一旦は特急を先に追い越させようとしたJRの決断を「何か」が変えた一瞬をTさんと共有した(というより、Tさんに無理やり共有させてしまった、というのが正しいだろう)出来事だった。

終わり