フライト

飛行機は混んでいた。ほぼ満席である。羽田に近づいて高度を下げているところで「これから気流の悪いところを通過するため揺れますので席に戻ってシートベルトを締めてください。機長の指示により客室乗務員も着席します。」とのアナウンスがあった。
その数分後機体がかなり揺れた。このシチュエーションでは、どうしても映画やテレビの報道番組の墜落のシーンをイメージしてしまう。個人的には、飛行機よりも鉄道派である。できることなら帰りも新幹線としたかった。しかし、夕方に打ち合わせが終わってそこから東京へ戻るとなると新幹線ではつらすぎる。仕方なく飛行機を選んだわけでる。海外への飛行機利用は割り切れる。船を利用するわけにもいかない。新幹線を利用できるところに飛行機を利用して万一のことがあったら無念でならない。もっとも、電車も最近は脱線転覆事故が見られる。吹雪の中事故に遭遇された被害者の方々にはお悔やみ申し上げたい。また残念ながら亡くなられた方々のご冥福を祈りたい。
この機長の判断はすばらしいと思った。乱気流を予め察知して客室乗務員も着席するよう指示したのだ。当然のことなのかもしれないが、素人目にはプロの技と写る。
乱気流を抜けて着陸の瞬間を迎えた。この瞬間はいつも緊張する。無事着陸した瞬間は、機長はじめ操縦士の方々及び客室乗務員の方々に感謝の気持ちで一杯になる。
思い起こせば10年以上も前になる。ロンドンに語学研修に向かう飛行機での出来事である。会社の仕事ではなく研修ということで格安チケットが手渡された。ひどい話で、ロンドンまで行くのになんとエールフランスでシャルルドゴールのトランジットなのである。しかも、シャルルドゴール空港に着くのは早朝4:00、そこでロンドン行きの便の出発時刻が7:00。空港の待ち時間が3時間もある。あまりに時間が中途半端であり、しかも早朝とあっては一旦空港を出てパリ観光する気にはならない。インドネシアに赴任していた時代は、シンガポール経由の便で帰国するのにシンガポール空港でのトランジットは夕方から夜にかけての5時間ほどあった。そこで一旦タクシーで街に出て、食事をしたり買い物をしたりして有意義に時間を過ごしてから成田行きの便に乗るのが楽しみのひとつでもあった。このシャルルドゴールでは、日が昇る前後の空港で約3時間ボケッと時間をつぶしてロンドン行きの便に搭乗した。機内にはおそらく小学生と思われる団体がいた。着陸の瞬間彼らから拍手と歓声が沸き起こった。彼らは無事に着陸したことに喜びまた感謝の気持ちを送っていた。これが本当の姿ではないかと思った。
本日のフライトはいつものように無事着陸して当然というムードであった。本来ならあのときのパリ−ロンドンのフライトのように拍手と歓声が沸き起こっても不思議ではないし、むしろそうであってほしいと思う。少なくとも私は心の中であのシーンをイメージして彼らと一緒になって拍手と歓声を上げた。この気持ちがある限り、私が乗る飛行機は必ず無事に着陸すると信じて疑わない。
今日も安全なフライトをありがとう!乗員の方々の職業的な知恵なしにはなしえないことである。
羽田空港第2ターミナル